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『終の信託』特別試写会・トークショーのレポートと感想

10月21日に立教大学ホームカミングデーで開かれた、『終の信託』の特別試写会とトークショーのレポートと感想です。
整理券は10時に配布開始でしたが、10時にはすでに配布会場の中庭は満員で、10分ごろには配布完了していました。
映画ですが、これまでの周防監督作品とは違い、画面の暗い、日本映画然とした映画でした。内容に関しては、ラストで泣きました。一見の価値はあります。
トークショーは、フジテレビの戸部洋子さんが司会を務めて、吉岡学長と周防監督が対談するというものでした。質疑応答もあったのですが、どれにも周防監督が即答して、しかも内容がはっきりとした思想をもったものだったので、映画製作への真摯さを感じました。
・特別試写会

海岸の映像が導入になります。
検察庁に登庁する綾乃(草刈民代)。綾乃は、古い官庁建築で冷たさを感じさせる庁舎の廊下を進んでいき、待合室に通されます。事務官(細田よしひこ)が検事の塚原(大沢たかお)にそのことを伝えると、一言「待たせておけ」とだけ言われます。そして綾乃の回想がはじまるのでした。

呼吸器内科の医師・綾乃は同僚の医師・高井(浅野忠信)と不倫をしていました。医療機器のおいてある一室でひと時を過ごすのですが、これはあちこちで質問されるのも納得のものでした。後のトークショーでも訊かれています。
綾乃は高井に甘えていますが、ある日、若い女性と連れ添っているところを目撃してしまいます。問い詰めると、逆に「結婚するなんて言ったっけ?」と開き直られます。
茫然とした綾乃は宿直室で休もうとしますが、寝つけず、酒と睡眠薬を大量に飲んで中毒を起こします。そこで緊急治療を施されますが、喉奥にまでチューブを挿入されたりして、言語に絶する苦しみを味わいます。
病室で安静にしている綾乃のもとに高井がきて、「恥ずかしい真似しやがって」と吐き捨てます。「そんなことしなくても俺はもう大学病院に戻るんだよ」そう言って高井は病室を後にするのでした。
現場に復帰するものの、どこか不安定で患者に心配される綾乃。そんな綾乃に、患者の江木(役所広司)が声をかけます。『ジャンニ・スキッキ』のCDを渡し、そのなかの『私のお父さん』をぜひ聴いてほしいと言います。家に帰ってから『私のお父さん』を聴く綾乃。CDには手製の歌詞カードがついていて、そこで綾乃ははじめて泣くことができたのでした。
病院の中庭で話をする江木と綾乃。江木の言うには、『ジャンニ・スキッキ』は、実は喜劇なのだそうです。そんな風に、二人は世間話をして過ごします。
江木は退院します。そのとき、綾乃は江木の妻と息子に病状が悪化していることを説明して、恐らく環境に原因があることを言いますが、妻は意志薄弱で、息子も少し素っ気なく、転居の話は立ち消えになりました。

場面は現実に戻ります。予定時刻を過ぎても綾乃を待たせる塚本に、事務官は不思議がります。事務官が同僚にそのことを話したところ、検事は容疑者を自白させなければならず、そのためには様々な手段を使うだろうということでした。今回のような社会的な注目を集めている事件ならなおさらだと。
ふたたび綾乃の回想がはじまります。江木は再入院し、病状はさらに悪化していました。ある日、綾乃は江木に幼いころ満州にいたときの話を聞かされます。他の日本人は全員、引き上げてしまって、江木の一家だけ取り残されていたある日、流れ弾に当たって江木の妹が瀕死の重傷を負います。医者もいなく、はじめは応急手当をしていた江木の両親も、いよいよ死が近づくと、子守唄を歌います。江木は、これは妹が安らかになれるように、死ねるように歌ったのだと言い、自分も子守唄のもとで逝きたいと言います。さらに、綾乃にすべてを任せたいと言います。綾乃はその子守唄を教えてほしいと言い、しかし、江木はかならず回復すると断ります。
そして江木が退院した後日、綾乃は江木に河原で出会います。江木は河原の下流に下りていくと、川面と空の交わる果てに自分もいける気がすると言います。二人で流木に腰かけて、以前、『ジャンニ・キッキ』が実は喜劇だったと聞かされたとき、身につまされたという話をします。江木が咳き込み、二人は綾乃の車中に入ります。お互い前を向いたまま、江木はいざとなったら綾乃に自分を安楽死させてほしいと頼みます。色々なことを話した後、綾乃はそれに頷きます。

ある日、綾乃の当直のときに江木が救急搬送されてきます。江木は吸入器ももたず、河原を歩いていて倒れたのだそうです。もはや心拍も呼吸も停止していて、必死の治療の後、意識は戻らないものの、人工呼吸器をつけて病室に移せるまでにはなりました。江木は、以前、自身が言っていたチューブだらけの姿になってしまいます。そして数週間が経過しましたが、一向に回復せず、脳波もとってみたものの植物状態のままでした。そこで綾乃は妻を呼び、以前、江木の話していたことを言います。江木がそう言っていたなら、と頷く妻に、家族を呼んでよく相談するように言います。
そして安楽死を行う当日。家族(妻、息子、娘)の同意をとり、綾乃は家族に最後の言葉を言うように促します。そして、呼吸器を外します。しばらくして、突然、江木が呻き、激しく身悶えします。綾乃は看護師に鎮静剤を投与するように指示しますが、それでも痙攣はおさまらず、綾乃みずから静かになるまで鎮静剤を与えつづけました。そして静かになった江木をみて綾乃は泣き崩れ、「ごめんなさい」と号泣します。そして、子守唄を歌うのでした。
家族と綾乃はベッドの反対側にいて、この間、家族は一切、画面にはいっていません。

そして検察庁の取調室。とうとう塚本が「通しなさい」と言います。ここからは終わりまで取調室のシーンになります。
この塚本を演じる大沢さんが凄い。半笑いを浮かべて悠然とした、自分の正当性を疑わないエリートを見事に演じています。名悪役です。存在感がありすぎて話を食ってしまっている気さえします。
塚本は黙秘権などについて説明した後、事実確認を行います。氏名、年齢、職業を尋ねますが、このとき綾乃が病院を退職したことが分かります。「女性で初の呼吸器科部長。よく思わない人もいるでしょう」「それは、何かこの件に関係あるのでしょうか」
次に、塚本は江木が搬送されてきたときのことを尋ねます。「そして治療の後、呼吸は安定した」それを聞いて綾乃はいきりたちます。「ちょっと待ってください。そんな簡単なものではありません。確かに自発呼吸は起きましたが…」「はいかいいえで答えてください」仕方なく、綾乃は首肯します。「ちゃんと声にだして」「…はい」
ここで綾乃は、希望時間があれば言うように、と書かれた待合室の掲示板のことを言って、六時には帰らせてほしいと言います。「なら、早く帰れるようにするんだな」
さらに、塚本は脳死だったかの確認を行います。「江木さんは脳死ではなかった」「脳死か植物状態かは一概に区別できるようなものではありません! いうなればグラデーションのようなもので…」「だからさ、あんたの講義を聞いているわけじゃないんだよ」
辞去しようとする綾乃に、塚本は言います。「個人的な用件なんだろう? もう患者がいるわけでもないし。これは呼び出し状を発行した正式な公務なんだ」
六時も近づき、尋問は大詰めを迎えます。鎮静剤を6ミリグラム投与しただろうと塚本は詰め寄ります。それに対して綾乃も4ミリグラムだと激しく反論します。二人とも語調は次第に高まっていき、綾乃が「4ミリグラム投与しました!」と激しく言うと、塚本は頷きます。4ミリグラムで致死量に達していたのでした。
塚本は口頭で供述書を作成します。今まで塚本が主張した通りの、筋書きされた供述書でした。「ここに署名してください」「何故ですか」「調書だからだ」それでも六時が迫っていることもあり、綾乃は署名をします。そして帰ろうとする綾乃を塚本は呼び止めます。「まだ終わりだとは言っていない」「でも希望する時間があれば言うようにと…」「希望はきく」

休憩をしたいという綾乃に、あなたも早く終わらせたいはずだ、と言って塚本は休ませません。それでも化粧室にいきたいと言う綾乃に、塚本は「トイレか…」とつぶやき、しばらく沈黙して、仕方なさげに事務官に顎でしゃくります。
尋問が再開します。塚本は綾乃に横浜事件の判例を説明します。それによると、死の切迫、耐えがたい肉体的苦痛、治療の見込みのないことが、要件として必要だそうです。
塚本は江木と家族の同意があったか聞きます。そして家族は江木が安楽死への同意、いわゆるリビング・ウィルを残していなかったと言っていたといい、また家族も綾乃に誘導されて安楽死に同意したと言っているといいます。実は、冒頭のところで塚本が江木の妻を誘導尋問する場面がありました。それに対して、綾乃は江木と個人的に話していたことを言います。
次に、死の切迫がなかったことを言いますが、綾乃は、慢性の疾患にとっては死期というのは時間的な遠近ではないと言います。
さらに、耐えがたい肉体的苦痛があったかと訊かれますが、綾乃は江木の病状を丁寧に説明します。
この間、塚本は形成が不利になると、その論点は無視して次の論点に移っています。そして、病院の院長も副部長も、前もって説明してもらっていれば延命できたと言っていることをいい、綾乃を問い詰めます。それに対し、綾乃は医師が集まれば、できるかぎりの治療をしようという結論になるものだと言います。
「私だってもっと生きていてほしかった…」綾乃は涙を流します。
「本人が望んでいなくて、なぜ生かしつづけなくてはならないんですか?」
綾乃の涙ながらの問いかけに、塚本は静かな声で言います。「生命は、尊重すべきだからだ」
「生命を尊重するのはひとの幸せのためじゃないんですか? 本人が望んでいないことを何故する必要があるんですか? 医者や家族が責任を逃れるためですか? 誰かが責任をもって患者の意思を果たしてあげなくてはならないんじゃないんですか?」
「そう考えて、江木さんを死なせたんだね?」それまで殺すという言葉を使っていた塚本は、ここではじめて言葉を選びます。
綾乃は静かに頷きます。
「折井綾乃。殺人罪で逮捕する。逮捕状だ」そう言って塚本は引出しにあった逮捕状を取りだします。私はここで泣きました。綾乃の愛に涙がとまりません。
綾乃は手錠をかけられ、事務官に連れられて廊下をゆくのでした。
字幕で、その後、江木の喘息日誌(冒頭ででてきました)にリビング・ウィルがあり、しかし、診断に明らかな誤診があったことから懲役二年、執行猶予四年の判決が下されたことが明らかにされます。
江木と綾乃の散歩した河原をバックに、エンドロールが流れます。

以上です。一度みただけなので、前後していたり、異なっていたりすることもあるかと思います。詳しくは劇場で確かめてください。

・トークショー

はじめに、司会の戸部さんが、見終わったあとは映画の内容と大沢さんへの憎しみの余韻にひたります、と言って会場をどっと沸かせます。なぜそこまで大ウケするかは『終の信託』をみれば分かります。
吉岡総長はサスペンス風で「怖い」映画だったという感想を言います。最初の庁舎の場面は小津安二郎の影響を感じると言っていました。私はカメラがぐいぐい動くので、あまりそうは感じませんでしたが。
それに対して周防監督は、冒頭の建物は実際の検察庁ではなく、冷戦下の東欧のようなものを意識したと答えていました。綾乃は待合室に一人でいさせられますが、庁舎の中で待つというのは、権力の構造を意識させるものだそうです。
後半45分は取調室の密室劇になりますが、これは原作の構成に忠実なのだそうです。台詞も多少削っただけで、原作のとおりにしたそうです。また、前半で完全に描写しているのでインサートは不要だと考えたのだそうです。そのことによって緊張感を出すことができたと言っていました。
また、推理小説をよく読んでいるそうで、取り調べというのはそれとまったく同じ、完全に事後的なものだと言います。観客が大沢さん憎しと思うのは、映画で前半部をみたからのことで(ちなみに鹿児島で試写したときには「(大沢さんを)ぶっ殺してやる」と言われたそうで、薩摩隼人は過激だなぁ、なんて笑っていました)、取り調べというのはそういうものだそうです。検事も社会も、何があったかは知ることはなく、知っているのは容疑者だけなのだといいます。
次に、『終の信託』はラブストーリーなのかということについて。それは安楽死を人として行ったのか、医者として行ったのかということなのだそうです。医者として行うのならやりようはいくらでもあった。また、撮影していてラブストーリーだということを意識したのは、車の中で会話するパートで綾乃が「あなたがいなくなったら、私はどうすればいいんですか?」と言う場面だったと言います。これはラブストーリーの台詞だなぁ、と。あのパートでは、河原と車中では意味合いが違うのだそうです。
主演が草刈さんだったことについて。周防監督は、みんなそれをきくんですよね、などと笑っていました。撮影しているときには、それをいかに映画として構築するかということしか考えていなかったそうです。むしろ、浅野さんがやりにくそうにしてたと言っていました。会場は爆笑です。ただ、撮影現場で草刈さんとタメ口でやりとりをしていて、俳優とタメ口で会話することは他にはないと言っていました。これは草刈さんの側からも同じだったそうです。
立教大学との関係について。あちこちで言っていますが、一般教養の蓮実教授の授業に出たことが完全なターニングポイントになったのだそうです。在学中は、勉強はしなかったが色々と考えたり悩んだりした学生生活だったそうです。『シコふんじゃった。』でシーズンスポーツ愛好会なんてのにはいる奴はアホだ、と書いたが、自分で社内にシーズンスポーツ愛好会をつくって、三十代は遊びました、と言って笑っていました。

以下、質疑応答です。
臓器移植をどう考えるかという質問。リビング・ウィルではないが、責任をもって、死生観は周囲に伝えておくべきだということでした。
なぜ劇中歌に『私のお父さん』を使ったのかという質問。ただ単に原作小説のとおりなのですが、国内外の映画ですでイメージがついているので迷ったそうです。それでも使用したのは、『ジャンニ・スキッキ』について調べたからだそうです。ジャンニ・スキッキは公証人で、富豪の遺言を勝手に書き換えて、財産をみんなに分配してしまう。しかし、そのおかげで富豪の娘は結婚できるし、みんな幸せになるという話なのだそうです。つまり、ジャンニ・スキッキは終の信託を書き換えた人の話なのだそうです。これには会場も大きくどよめきます。対して、綾乃は終の信託を実行して社会的に敗者となる。原作者の意図なのだと思うが、これを調べて感動したため、そのまま使用することに決めたのだそうです。
江木が救急搬送されたときに、なぜ人工呼吸器をつけたのかという質問。家族の同意をあおぐ時間がなかったので、原則的に人工呼吸器を装着したのだそうです。たしかにはじめに人工呼吸器をつけなければ誰も罪に問われることはなかった。ただ、取材してみると現場によっては担当医の判断によるところもあると知ったそうです。

最後に吉岡総長、周防監督の挨拶。
吉岡総長は、綾乃が江木の妻を隙間からみてる場面や、江木の妻と娘を下から撮影しているカットをとりあげて、ヒッチコックというかサスペンスで非常に「こわい」映画だと言って、戸部さんがフォローにまわってました。
周防監督は吉岡総長に式辞集というのをみせてもらったそうで、そこから引用していました。綾乃が何のために生かすのか、それはひとの幸福のためじゃないかと言ったが、アリストテレスによると、人間の最高善とは幸福であり、それに代わるものはないのだ。また刑事司法について、マックス・ウェーバーによると、制度とは自己目的化して硬直するものだ。「結びまで書いてあって驚いたんですけど」と笑って、思考するというのは社会の既存の枠組みを考えるという点で反社会的なものである、とつづけました。大学生のときには映画というのは監督のものだと思っていたが、本当は観客のものであり、この映画が何か資してほしい、と言って結びとなりました。
最後には立教大学相撲部の主将・渡辺君から花束の贈呈がありました。なんとまわし一丁です。渡辺君は部員は現在三名です、などと言って観客を笑わせていましたが、周防監督は「『シコふんじゃった。』は立教大学相撲部がなければ存在しなかった」と言って、「『シコふんじゃった。』から、辛抱・我慢の言葉を贈ります」と花束を受け取りました。



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